2009/06/02

Day1: 評価指標作りのコンセンサス形成過程

不安は杞憂に終わり、初日から大興奮のインターンでした。
ケーススタディを抜け出た、リアルな体験にはしびれます。

今日からしばらくの間は友達向けの近況報告というよりも、
すこしマニアックな話になります。あしからず。


医療のアウトカム指標のコンセンサス形成
かつては色々な機関が独自にアウトカム指標を作っていましたが、
どうやら「指標についてNQFによるendorsement(承認)をもらう
→指標を活用する」という流れができつつあるようです。

NQF(National Quality Forum)とは官民連携で作られた
非営利の組織で、医療の質の評価と公表に関する
国家戦略を立てようとしています。

今は医療の質評価の文脈で最も影響力を持つ機関といっても
過言ではなさそうです。

ここで決まったことは概ねCMS(公的保険)の取り組みとして
採用されることになります(≒全米規模で実施)。


今日はそのNQFがいかに関係各者と指標に関するコンセンサスを
形成しているのかを目の当たりにしました。

私にも不明な点がありますが、概ね下記のようになっています。
  1. 専門家による委員会(技術的な側面の検討)
  2. 関係各者による委員会(ステークホルダーの意見交換)
  3. NQFメンバー/パブリックによるコメント
  4. NQFメンバーによる投票
  5. 承認委員会によるレビュー(重要性、妥当性、消費者の使い勝手、実現可能性)
  6. NQFの評議会での承認
ということで、今日は3と4の間の会議でした。

会議は電話会議で、医療提供者、学会からビジネスサイドまで
20以上の団体から担当の人が参加して
予め出揃ったコメントに関する意見を述べていました。

私のインターン先も指標の提案をしており、
それに対する反対意見も出ましたが、
何とか反論はクリアできたようでみなさん(といっても二人、)
ガッツポーズです。

あとから話を聞いて興味深かったのは、
関係各者によってフィロソフィーが全く違う中でも、
もう何年も意見交換しあっているので、
互いに譲歩をしてでも合意形成をしましょう、
という雰囲気・チームワークができあがっている、とのことでした。


質の評価指標Tips
  • 日本でもそうですが、プロセス指標からアウトカム指標へ重点を移しましょう、という動きは確実にあります。
  • あと興味深いのは、"Composite Measures"に注目が集まりつつある点です。これはいくつかの指標を、重み付け等した上で一つにまとめて質を総合評価しよう、という流れです。(もう少し勉強したらまたUpdateします)
  • その他、質評価のデータをどこから取るか、という点も面白い論点です。例えば心臓の手術にしてもある学会で形成された指標は個別のカルテからデータを取っていますが、ビジネスサイドはレセプトデータからで十分、と考えています。これに関しては、科学的な精密性と指標の活用可能性の間の綱引きになります。いくら精密でもデータ取得に莫大なコスト(主にマンパワー)がかかるなら国家的な取り組みにはなり得ません。また、簡便でも精密でなければ使えません。が、今のところは、カルテからデータ取得を、という流れにはならなそうな感触です。

□友達からのQ&A
  • Q. 労働者側で指標を作って、誰に対してどのように活用するのでしょうか?病院に対して、価格設定を下げてもらう感じなのでしょうか?
  • A. 労働者側で指標を作って、といっても、指標自体は大学かどこかの研究機関が請け負って作ることになるので、普通の指標と大きく異なるということはありません。病院が自分自身で活用できますし、消費者も使えます。病院に対して価格を下げるというよりも、医療の情報の透明性を上げて、従業員(患者)や企業(保険の購入者)が今よりも少しでも賢い選択して、いい病院へシフトすることを狙っています。もちろん、Pay for Performanceにも活用できるので、金銭的なインセンティブ・ディスインセンティブに結びつけることも可能です。

明日はまた別な会議のようで。
楽しみです。

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