2009/07/02

医療の質と消費者の選択

医療の質の情報をオープンにすることの主な目的は
消費者・患者に賢い選択をしてもらうことですが、
実はこの点はアメリカでも思ったよりも上手くいっていない、
というか、良く分かっていないのが実情です。

ニューヨーク州では早くから心臓手術の成績を病院別・医師別で
実名公表していますが、当初予想されたような患者の大きな移動が
起こらなかった事実は、指標の推進者自身が認めています*。

ほとんどの場合、患者はデータの存在を知らないまま
手術に突入しているというのが現状です**。


ニューヨーク州のデータが、Googleで簡単に見つけられる場所に
あるとは思いませんが、仮に見つかりやすいところにあったところで
消費者・患者が病院選択に際し、そもそもインターネットを使うのか、
前提条件から疑ってみたほうがいいのでしょう。

ネット上にある、CMSのHospital Compareも、Leapfrogのデータも、
厚労省のDPCページも、現状では、普通の消費者・患者が
利用しているとは思えません。


消費者に情報を探す能力を高めてもらう、という何らかの政策や啓蒙も
いいのかも知れませんが、気が遠くなってしまいそうです。
むしろ、保険者や政府による規制の方が現実的な気がします。


保険者からの規制で言えば、例えば、メーン州の保険者が
質の悪い病院を保険のカバーから外したりしています。
担当者いわく、患者の受療行動に変化が出たそうです。
ドラスティック過ぎて日本では受け入れられないと思いますが。。

政府の規制で言えば、かかりつけ医から病院への患者紹介時に
何らかのインセンティブ・ディスインセンティブを付与することは
日本だったら実現できる可能性が高い気がします。


どんな方策を取るにせよ、
最終的には患者がいい病院で医療を受けないかぎり
「医療の質評価」業界の目的は達成されないわけで。

業界としても、質評価の方法論から、
質に基づく受療パターンの変容に活動の焦点を移していくことが
求められているのだと思います。


*Chassin, M. R., Hannan, E. L., & DeBuono, B. A. (1996). Benefits and hazards of reporting medical outcomes publicly. New England Journal of Medicine , 394-8.

**Schneider,E.C., Epstein, A.M. (1998)Use of public performance reports: a survey of patients. JAMA , 279(20): 1638-42.

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